こんな人におすすめ
- そろばんの効果を知りたい
- 客観的なデータをもとに話したい
- 科学論文の結果を見たい
今回は少しマニアックに、そろばんの効果を脳科学的に考えてみたいと思います。
そろばんには、一般的に以下のようなイメージがありますよね。
そろばん=右脳が育つ、脳トレになる
でも、実際にはどうなんでしょうか?
実は、そろばんの効果について、世界中の研究者が注目して研究をしています。
この記事では、その研究結果を引用しつつ、そろばんの効果を考えてみましょう。
子どもの習い事として「そろばん」は再注目を集めています。
そろばんを習うことのメリット・デメリットを知ったうえで、お子さんに合った習い事を見つけましょう!
そろばんを習うデメリットは見逃せない!?メリットと共に解説【習い事を探す親は必見!】そろばんの効果とは?脳科学の知見を調べてみた
そろばんの効果に関する脳科学・心理学の研究論文を読んでみたところ、そろばんには以下の3つの効果がありそうです。
- そろばんは実行機能を育てる
- そろばんはワーキングメモリーを育てる
- そろばんは算数能力を向上させる
- そろばんは非認知能力を育てる
- そろばんは脳の活動に変化を与える
「それぞれ論文を引用しつつ解説しますね」
効果①:そろばんは実行機能を育てる
2017年に発表されたWangらの研究結果では、「そろばんトレーニングは実行機能を向上させる可能性がある」と結論づけていました。
実行機能=自己調整行動に関与する一連の認知能力
この研究では、対象となった子どもをランダムに「そろばんトレーニングを受けた群」と「受けなかった群」に分けて、実行機能を測定する検査と検査中の機能的MRIを測定しています。
その結果、そろばんトレーニングを受けた群は「実行機能の検査の成績が良く」「前頭前野(脳の部位)の神経効率を高める」ということが示されました。
「そろばんの効果が脳科学的に証明されたわけですね!」
効果②:そろばんはワーキングメモリーを育てる
2020年に発表されたRoyらの研究結果では、「そろばんトレーニングはワーキングメモリーを向上させる可能性がある」と結論づけていました。
ワーキングメモリー=作業に必要な情報を、一時的に保存し処理する能力
この研究でも対象となった子どもをランダムに「そろばんトレーニングを受けた群」と「受けなかった群」に分けて、ワーキングメモリーを測定する検査を実施しています。
その結果、そろばんトレーニングを受けた群は「ワーキングメモリー検査の得点が高い」ということが示されました。
「要するに、そろばんをやると記憶力が良くなるってことですね!」
効果③:そろばんは算数能力を向上させる
2015年に発表されたWangらの調査研究では、「そろばんトレーニングは算数能力および課題の切り替えの力を向上させる可能性がある」と結論付けています。
この研究では、小学1年生を対象としており、そろばんトレーニングを受けた子は受けていない子よりも算数能力を測るテストの結果が高いことが示されました。
しっかり計算力・暗算力を高めることが客観的に示されているようですね!
効果④:そろばんは非認知能力を育てる
2022年に発表されたMouらの調査研究では、そろばんトレーニングにより以下の能力が向上したと記載されていました。
- 暗算
- 忍耐力
- 自制心
- 達成意欲
- 自己効力感
上記のように、学習面以外にも子どもの成長にプラスの影響がある可能性が示されたことは意義が大きいですよね!
効果⑤:そろばんは脳の活動に変化を与える
最後に、様々な「そろばん×脳科学」の研究結果を集めたWang(2020)のレビュー論文を紹介します。
このレビュー論文によると、そろばんトレーニングは計算力や実行機能、ワーキングメモリーなどの様々な認知能力を高める可能性があると結論づけています。
また、そろばんトレーニングは、前頭葉-頭頂葉および後頭部-側頭部に位置する機能的および解剖学的な神経変化をもたらす可能性があるとも考察されていました。
「そろばんを練習することで、脳が活性化するわけですね!」
そろばんの効果で「右脳が育つ」は間違い!?
「そろばんで右脳が育つのか?」という問いに対して、以下の順序で解説していきます。
- 右脳と左脳の違い
- 「右脳が育つ」とは?
- そろばんで「右脳が育つ」は間違い
「順番に解説しますね」
右脳と左脳の違い
一般的に、右脳と左脳は以下のように働きが異なるといわれています。
- 右脳:音楽、空間、感覚、感情
- 左脳:言語、数字(文字)、論理的思考
実は、医学的には上記のようにきれいに働きが分かれているのではなく、様々に絡み合いながら脳は働いているわけです。
とはいえ、大まかには右脳と左脳は上記のように機能が分かれていると言われています。
「右脳が育つ」とは?
右脳を育てるといったときに、一般的に思い浮かべるのは以下のようなことですよね。
- 記憶力
- 判断力
- 集中力
- 想像力
そろばんを習うことで、おそらく上記のような能力は伸びるでしょう。
でも、「右脳が育つ」かと言われると、厳密には違うかなと思います。
そろばんで「右脳が育つ」は間違い
そろばんトレーニングの研究結果をみると、脳科学的にそろばんの効果がみられているのが「前頭葉(おでこのあたり)」が中心です。
その他にも、「側頭葉(耳の上あたり)」「後頭葉(うしろ頭あたり)」での効果も確認されています。
要するに、脳の前方部分を中心に、全体的に脳活動が上がっているととらえた方が良さそうです。
「右脳に限った話ではないということですね!」
そろばんの効果を脳科学の研究結果を調べる方法
こんな感じで海外の研究結果などを紹介すると「自分でも調べてみたい」と思う人もいるかと思うので、調べ方を紹介しますね。
- 論文を探す
- 英語を翻訳する
「私はこの順番でやっています」
方法①:論文の探し方
論文を探すときには、Pubmedというサイトが便利です。
医学・心理学に関する論文を中心に検索することができます。
「abacus effect」などと検索窓に入力すると、関連する論文を表示してくれますよ。
「日本語での検索はできないので、英語で入力しましょう」
方法②:英語の翻訳の仕方
英語が読める人はそのまま論文を読めばOKですが、私は英語が全然読めないので「翻訳ツール」を使っています。
おすすめは「DeepL」です。
他の無料ツールとは比べものにならないくらい精度よく翻訳してくれますよ!
「そろばんの効果×脳科学」についてのよくある質問
「そろばん×脳科学」に関する以下のよくある質問に答えます。
- 紹介されていた論文の対象者は何歳くらいなの?
- 論文に書かれていないものは効果がないってことなの?
- 日本人でも同じような効果があるの?
質問①:紹介されていた論文の対象者は何歳くらいなの?
今回紹介した論文では、小学生のときに効果検証をしていました。
中学生以降でそろばんトレーニングを始めた場合の効果については、調査した論文を見つけることができません。
「今後の研究に期待しましょう」
質問②:論文に書かれていないものは効果がないってことなの?
論文に書かれていないから効果がないというわけではありません。
論文に書かれていないことは「立証されていない」ととらえるのが良いかなと思います。
要するに、客観的な効果があるかどうかは分からないということですね。
質問③:日本人でも同じような効果があるの?
今回紹介した論文の対象児は日本人ではありません。
厳密にいうと、日本在住の子どもへの調査が必要だと思います。
とはいえ、そろばんに関しては使っている道具は同じですし、扱う概念も数字なので、文化や人種の影響は受けにくい気はしますが…。
「まだ、検討されていないので分からないですね」
まとめ:そろばんの効果は脳科学でも実証されていた!
というわけで、「そろばん×脳科学」について解説しました。
そろばんの効果について、脳科学的に結果がでてきたのは以下のとおり。
- そろばんは実行機能を育てる
- そろばんはワーキングメモリーを育てる
- そろばんは脳の活動に変化を与える
こうやって、そろばんの効果が世界中で注目され、研究されているという時点ですごいことですよね。
今後も研究が進むことで「そろばんの魅力」が明らかになっていくことを楽しみに待ちましょう。
また、研究に進展がありましたら、このページに追記していこうと思います。
そろばんを習うメリット・デメリットや、おすすめの教室については以下の記事もお読みください。
そろばんを習うデメリットは見逃せない!?メリットと共に解説【習い事を探す親は必見!】